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うめづしえんおうでん

梅津只円翁伝

杉山 萠円

「福岡日日新聞」1934(昭和9)年4月14日~5月31日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,582 字 · 130 页

青空文庫

その頃の那珂川の水は透明清冽で博多織糸の漂白場であったが、ずっと上流まで博多湾から汐がさして、葦原と白砂の洲が到る処に帯のように続いていた。その水深約一尺以内の処にはハラジロ(沙魚の子ともいい別種ともいう)が一面に敷いたように居るのを翁が目堰網で引っ被せてまわる。

ハラジロは形が小さいので、獲ったアト始末が面倒なために普通の網打人は相手にしなかったから、いつも沢山に獲れた。その獲れる事と、獲ったアトの面倒さと、喰べる時の風味のよさが翁の楽みとし得意とするところらしかった。

霜の真白い浅瀬に足を踏張って網を投げている翁の壮者を凌ぐ腰付を筆者が橋の上から見下して、こちらを向かれたら、お辞儀をしようと思っていると、背後を通りかかった見知らぬ人がよく、

「ああ。まだ只圓先生はお元気そうな」

と云い云い立佇まって眺めたり、そのまま通り過ぎて行ったりした。翁の存在を誇りとして仰いでいた福岡人士の気持ちがよくわかる。

翁は網打ちに行くといつもまだ日足の高いうちに自宅に帰って、獲れた魚の料理にかかる。

大きいのは三寸位の本物の沙魚やドンク(ダボハゼの方言)の二三十位から、一寸にも足らぬハラジロの無数を、一々切出小刀で腹を割いて一列に竹串に刺し、行燈型の枠を取付けた白角い七輪のトロ火で焙り乾かして、麦稈を枕大に束ねて筒切り