轻松读懂日语经典作品
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ばいしのつえ
梅颸の杖
吉川 英治
「文藝春秋 オール読物号」1930(昭和5)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,966 字 · 32 页
角の芝居見物の日には、梨影女も供をした。五ツになる辰蔵は、ばば様の膝で、父の山陽がひいきにしている梅玉座頭の忠臣蔵に目をまるくして大人しくしていた。
その芝居小屋で、追い込みの中から梅※(「風にょう+思」、第4水準2-92-36)の方へ、軽ッぽくお辞儀をした男があるので、その日も一緒に来ていた後藤松蔭が、
『今のは誰でございますか』
と、ふしぎそうに梅※(「風にょう+思」、第4水準2-92-36)へ訊ねると、
『あれじゃよ、いつぞやの盗児はの』
『え。……八百長へ鮮魚を贈って来た、あのごまの蠅でございますのか』
『ごまの蠅?』
梨影女も、熟生の竹井も、うしろを振り顧って、うす暗い土間を物色した。無数な人間の首の中に、色の小白いにこにこした男の顔が感覚的に眼に映った。
『見るのじゃない、見るのじゃない』
梅※(「風にょう+思」、第4水準2-92-36)は、舞台の方へ向いたまま首を振った。そんな事もあったりして、四月になると、京は葵祭り、やがて節句、長喜庵の水鶏きき、丸山の寮の招き、祇園の稚子行列。そして夏には、淀の網打ちにも屡誘われ、四条や糺の夕涼み、或は、宇治の集りと、彼女を飽かせまいとする行楽と行事は果しがなかった。