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きょうゆう
梟雄
「文藝春秋 第三一巻第八号」1953(昭和28)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,160 字 · 31 页
それをやる代りに信秀の娘を一人よこせ。ウチの六尺五寸のヨメにする。五日のうちに交換しよう」
「ハ?」
平手は喜びを感じる前に雷にうたれた思いであった。怖る怖る道三の顔を仰いだ。老いてもカミソリのような道三の美顔、なんの感情もなかった。
「濃姫のヒキデモノだ」
道三は呟いた。
両家の娘を交換する。それは対等の同盟を意味している。しかるに今の道三と信秀は全然対等ではなかったのである。平手は七重の膝を八重にも曲げて懇願しなければならない立場だ。しかるに道三が対等の条件にしてくれた。それが最愛の娘濃姫を与える大悪党のヒキデモノであった。
年内に濃姫は信長のオヨメになり、織田家からは妾腹の娘が六尺五寸殿にオヨメ入りした。信秀の本妻には年頃の娘がなかったせいだが、これでは対等を通りこして、道三の方が分がわるい。しかし道三は平気であった。
難物と目された美濃との和平は一日で片がつき、弱小の清洲との和平に一年かかった。清洲の条件が高いのだ。そして、折れなかった。それほど信秀は落ち目であった。
ところが道三は落ち目のウチの鼻ツマミのバカ倅に愛する娘をヨメに与えたのである。