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きょうゆう

梟雄

坂口 安吾

「文藝春秋 第三一巻第八号」1953(昭和28)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,160 字 · 31 页

青空文庫

けれども、当時の鉄砲は最初の一発しか使いものにならなかった。タマごめや火をうつすのに技術を要しまた時間を要するから、二発目の発射までに敵に踏みこまれてしまう。技術的に短縮しうる時間だけでは、それを防ぐことができない。また機械の改良によって時間を短縮することは、当時の科学水準ではまったく、絶望であった。

そこで鉄砲は最初の一発しか使用できないということは当時の常識であり、武将たちは敵の二発目を許さずに突入する歩兵の速度を鉄砲対策の新戦術として研究した。

彼だけはアベコベだった。彼はあくまで鉄砲に執着した。二発目も三発目も、否、無限に鉄砲を射ちまくることに執着したのである。そして、その方法を発見した。彼は鉄砲組を三段に並べることを考えた。三段でなくて、四段でも五段でもよいけれども、技術的に三段まで短縮することができたのだ。

つまり、第一列目が射つ。次に第二列目が射つ。次に第三列目が射つ。その時までに第一列目のタマごめが完了する。かくて彼の鉄砲はつづいて何発も射つことが可能となった。

この鉄砲戦術も後日信長が借用してわがものとする。信長はさらに改良を加え、野戦に特殊な鉄砲陣地を構築する。