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もりのいしまつ
森の石松
山中 貞雄
「シナリオ・臨時増刊号」1937(昭和12)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,949 字 · 49 页
安五郎、将棋に夢中で次郎長が傍へ来たのを知らない。
「うーむ、吉兵衛、手は何だ」
「手は金銀に桂二枚」
「そうか、金銀に桂二枚と……」
次郎長、将棋盤を蹴る。
驚く一同。
安五郎、
「なッ、な、な、何をするんだ」
「おッ、安五郎、人が両手をついて礼儀を厚く拶挨しているんだぞ。それに今将棋が面白え処だ、済んでから逢おう、茶でも呑んで待ってろとは何をぬかしやがるんだ」
「うぬは、ど……」
「俺が今日此処へ来たなあ茶を呑みに来たんじゃねえッ。今から四年前に俺の身内の佐太郎を殺した上、金をとって逃げた神沢の小五郎を今日此の町外れの街道で俺が叩っ斬った。一言拶挨に来たんだ」
吉兵衛が、
「じゃ、手前が小五郎どんを……?……」
「確かに俺が叩っ斬って、首は児分が持って先へ清水に帰ってしまった」
「よッよッよくもきッきッ貴様ッ」
「何を吃りやがるんだ。おおども安、手前どもりゃ人を斬るって話だが、此処で一ぺん、どど、と吃って斬って見ろ。おい斬れッ」
用人棒の一人が次郎長の背後に廻る。
石松、叫ぶ。
「あッ、危ねえ」
行燈が倒れて闇黒の中に叫喚、怒声。
S=廊下
障子破れて、襖が倒れて、五六人の黒い影が組んづほぐれつ段梯子を折り重って転がり落ちる。