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もりのいしまつ

森の石松

山中 貞雄

「シナリオ・臨時増刊号」1937(昭和12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,949 字 · 49 页

青空文庫

「爺っつあん、草鞋を一足頂けませんか」

S=表

石松、隣りから薬持って帰って来る。

S=店

入って来た石松、

「遅くなりました。寝ているのを叩き起していたもんですから。おや、お貸元は何処へ行きなすったんだ」

源兵衛、

「あの人帰ったよ。お前によろしくって」

「帰った? そんな筈があるもんか」

と石松、表へ躍り出る。

「お貸元、お貸元ッ」

闇の中に出て、呼んだが答えがない。

石松、ひき返して来る。

源兵衛は白ばくれて居るが、お静の顔色で、

石松、可怪いぞと思った。

「変だ変だと思ったが……さては、父っつあん、お前お貸元に何か云ったな?」

「儂が何を云うものか?」

「いや、屹度そうだ。云ったに違いない、お静、そうだろう? 父っつあんがお貸元を追い返したんだろう? そうだろう?」

お静の困った顔。

石松、激して来る。

「父っつあん、なぜ、お貸元をお帰ししたんだ。なぜ帰したんだ? 俺が折角……折角苦心してお連れ申したのに! 父っつあんは何故ッ、何故お貸元をッ」

「五月蝿えッ」

親子の睨み合い――

「石松、今夜はもう遅いから寝ろ」

「父っつあん、一と言云っとくが……お前が何んと云ったって、俺ァ清水のお貸元の身内になるんだ。