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しいのき

椎の木

豊島 与志雄

「経済往来」1934(昭和9)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,870 字 · 52 页

青空文庫

」

「ええ。」

そこで良一は、川村さんの家の前で竹山に出逢った時からことを、あらまし話した。

「そうか、そして君は、あの男のことをどう思う。」

「どうって……。」

「正直だと思うか、それとも、少し変だと……。」

良一は返事に迷った。そしてふと、川村さんに対する伯父の言葉を思い出した。

「尤も、変だと云えば、僕だってそうだが……。正気の沙汰じゃないと云われたことがある。」

「誰にですか。」

「たしか、君の伯父さんだった……そしていろいろな意見をされた。」

良一はぽかんとした。川村さんは苦笑していた。

「実は……今日、伯父に相談にいってみたんです。」

「相談だって……。」

良一は仕方なしに、金策のことを伯父に頼みにいったことを、そしてうまくいかなかったことを、うちあけた。

川村さんは笑いだした。晴れやかな笑いだった。

「それゃ、駄目だよ。僕の方が先に話しちゃった後だからね。どうも、不思議なまわり合せだね。伯父さんのところへ行って、それからまた竹山に逢って……。」

川村さんは急に顔を曇らせた。そしてひどく真面目な調子になった。

「これも何かの縁だ。君にすっかり話してあげよう。