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がいねんとこころそのもの
概念と心其もの
宮本 百合子
「時事新報」1920(大正9)年7月21~25日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,493 字 · 13 页
一口に云えば、自分は「人」から思想を抽象するのではなく、逆に、思想を人に割当て、或る概念の偶像を拵らえようとしていたのだとも云えるだろう。
女性に就て云っても、或る時には、感情的、理智的又は智的、無智等と云う大まかな、蕪雑な批評で安んじるような傾向が決して無いとは云われなかったのである。
けれども、人は決してそんな単純な形容詞で一貫するような性格を持っているものでは無いのだ。
複雑に複雑を極めた箇性の内面の力が、圏境や過去の経験に打たれ、押し返し、揉み合って一歩ずつ、一歩ずつ今日まで歩み進んで来たのが、今日のその人でありその人の生活であるのだ。箇人の内的運命と外的運命とが、どんなに微妙に、且つ力強く働き合って人の生涯を右左するかと思うと、自分は新しい熱心と謙譲とで、新に自分の前に展開された、多くの仲間、道伴れの生活の奥の奥まで反省し合って見度く思う。自分が人及び女性として、漸々僅かながら立体的の円みをつけ始めると、同性の生活に対して、概念でない心そのもので対せずにはいられなく成って来た。所謂婦人問題の、題目を研究し理解しようとするのでは無い。種々の問題を起す、最も根本的原因である女性の心そのものを、心そのもので観、考え、批判して行き度く思うのである。