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とちのはな

橡の花

梶井 基次郎

「青空」1925(大正14)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,685 字 · 22 页

青空文庫

私はいささか亢奮をしていたのです。

然しそれが芸術に於てのほんとう、殊に詩に於てのほんとうを暗示していはしないかなどOには話しました。Oはそんなことをもおだやかな微笑で聴いてくれました。

鉛筆の秀をとがらして私はOにもその音をきかせました。Oは眼を細くして「きこえる、きこえる」と云いました。そして自身でも試みて字を変え紙質を変えたりしたら面白そうだと云いました。また手加減が窮屈になったりすると音が変る。それを「声がわり」だと云って笑ったりしました。家族の中でも誰の声らしいと云いますから末の弟の声だろうと云ったのに関聯してです。私は弟の変声期を想像するのがなにかむごい気がするときがあります。次の話もこの日のOとの話です。そして手紙に書いておきたいことです。

Oはその前の日曜に鶴見の花月園というところへ親類の子供を連れて行ったと云いました。そして面白そうにその模様を話して聞かせました。花月園というのは京都にあったパラダイスというようなところらしいです。いろいろ面白かったがその中でも愉快だったのは備えつけてある大きなすべり台だと云いました。そしてそれをすべる面白さを力説しました。