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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

」

「あの時は、さすがに奴らもしいんとなってしまったね。」

佐野や恭一や、そのほかの新しい五年生たちが、代る代るそんなことを言った。大沢はただにやにや笑って聞いていた。朝倉先生も、腕組をしたまま、默々として聞き入っていたが、急に、大沢に向って、

「で、結局、どう落ちついたんだ。」

「お流れです。しかし、僕、最初っから僕たちの考えにまとまるとは考えていなかったんです。お流れになれば成功でしょう。」

「うむ――」

と、朝倉先生は、しばらく考えて、

「しかし、このままではいけないね。このままでは、どうせ鉄拳制裁の悪風はやまんよ。」

「しかし、そういうことを五年生全体の特権のように考えていたことだけは、これで破ることが出来たと思います。」

「その代り、病気を深部に追いこんだことになるかも知れんね。」

「はあ?」

と、大沢はその大きな眼をぱちぱちさした。すると、先生の澄んだ眼が、かすかに笑って、

「君もまだ、案外、形式主義者のようだね。」

大沢は、すっかりあわてて、膝を立て直した。ほかの生徒たちも、これは案外だという顔をしている。

「むろん、五年生全体の名において、下級生に鉄拳制裁を加えることが、これまで当然のことのように考えられていたのは、この学校の一番の悪風だ。