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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
03 第三部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页
それは親子の縁が永久であるのと同様である。諸君が将来、社会的にどんな高い地位につこうと、或はその反対に、どんな逆境に沈もうと、宝鏡先生はやはり諸君の先生として、諸君を見て下さるだろう。私は、諸君が将来どこかで先生の膝下に参じ、過去の思い出を語りあい、更に何かとお教えを乞う機会があることを確信する。」
次郎は、変に悲しいような気持になって、首を垂れた。
やがて宝鏡先生が校長に代って壇に立ったが、その顔はいくぶん蒼ざめて硬ばっていた。先生は、先ず手巾で顔の汗をふき、どこを見るともなく、その大きな眼をきょろきょろさせた。それから、だしぬけにどなるような声で挨拶をはじめたが、それには順序も何もなかった。ただ、不思議に言葉だけは滔々とつづき、しかも「授業を一時間も休まなかった」とか、「私事をもって公事をおろそかにしなかった」とかいうような、校長のほめ言葉を何度も自分でくりかえしては、やたらに謙遜したり、感激したりした。
次郎はきいていてはらはらした。近くの生徒たちの中には、可笑しさをこらえて、肱でつっつきあったりする者もあった。先生たちの顔も変にゆがんでいる。