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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

今では番頭格の、徴兵検査を二三年まえにすました仙吉という小僧に教わって、客足のない朝のうちに、彼はまず酒の量り方を熱心に稽古した。また元桶の酒を売場の甕に移すやり方や、水の割りかたなども一通り教わった。そして、午後になると、自分と同い年の文六というもう一人の小僧といっしょに、襯衣一枚になって、徳利を洗ったり、得意先に酒を届けたり、そのほかいろいろの雑用に立ち仂いた。

俊亮も、お祖母さんも、それを見て、いいとも悪いとも言わなかった。しかし二人とも内心喜んでいる様子は少しもなかった。俊亮は、「正木のお祖父さんも、大巻のお祖父さんも、お前の夏休みを楽しんで待っておいでだったがね」と言い、お祖母さんは、俊亮のそんな言葉にも、ただにがりきっているだけだった。

お芳は、例によって、どんな気持で次郎を見ているのか、さっぱりわからなかった。番頭の肥田がいなくなって以来、俊亮の留守のおりには、ちょいちょい店の見張りに出て、何かと店のことも心得ていたせいか、わざわざ次郎の仂いているところにやって来て、自分の気のついたことを教えてやったりするのだったが、それにとくべつの意味があるとも思えなかった。