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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

一五 鑿

無計画の計画どころか、あべこべに、せっかくの計画が無計画の結果に終ったとしか考えられなかったのである。

こうして、彼の考えのいつものよりどころであったこの言葉も、彼の幻滅感をやわらげ、実社会に対する彼の疑惑を消し去るには、何の役にも立たず、かえって、そんな言葉をよりどころにしていた自分に、ある不安を感ずるような結果にさえなって行くのだった。

彼は、父が家にいないのを、これまでになく淋しく感じた。父と今日のことをもっと語りあってみたら、きっとこんないやな思いから救ってもらえるだろう、という気がしてならなかったのである。そして、机のまえに坐ったまま、昼飯時になってお芳に階下から呼ばれても、なかなかおりて行こうとしなかった。

しかし、しぶしぶお膳について飯をかきこんでいるうちに、彼は、ふと朝倉先生をたずねてみょうという気になり、箸をおろすと大急ぎでそとに飛び出した。

一五 鑿

次郎が、朝倉先生の玄関の前に立つと、すっかり建具をはずして見透しになっている茶の間から、奥さんが小走りに出て来て、

「あら本田さん、お珍らしいわね。お休みになってから、ちっともお見えにならないものだから、どうなすったのかと思っていましたわ。