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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

手紙の宛名には日田町○○番地田添みつ子殿とあり、裏面には白野正時とあった。

三人は、それから、その日とその翌日とを、やはり無計画のまま、やたらに歩きまわった。その間に、竜門の滝という古典的な感じのする滝を見たり、何度も小さな温泉にひたったりした。そしてふところもいよいよ心細くなったので、白野老人のすすめに従って、それからは、まっすぐに日田町に下ることにした。

日田町までは一日がかりだった。町について田添ときくと、すぐわかった。りっぱな医者のうちだった。一晩厄介になっているうちにわかったことだが、みつ子というのはその医者の奥さんで、白野老人の末女に当るのだった。この人がまた非常に親切で、歳はもう四十に近かったが、まるで専門学校程度の、聰明で快活な女学生のようだった。筑水下りの船も、前晩からちゃんと約束しておいてくれたらしく、朝の八時頃には、家のすぐ裏の河岸に、日田米をつんだ荷船がつながれていた。船賃も夫人が払ってくれた。

三人はまるでお伽噺の世界の人のような気持になって船に乗った。船が下り出すと、みつ子夫人は河岸からしきりに手巾をふった。

「無計画の計画も、こううまく行くと、かえって恐ろしい気がするね。