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うたよみにあたうるしょ

歌よみに与ふる書

正岡 子規

歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年2月12日<br> 再び歌よみに与ふる書「日本附録週報」1898(明治31)年2月14日<br> 三たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年2月18日<br> 四たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年2月21日<br> 五たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年2月23日<br> 六たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年2月24日<br> 七たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年2月28日<br> 八たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年3月1日<br> 九たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年3月3日<br> 十たび歌よみに与ふる書「日本」日本新聞社、1898(明治31)年3月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,419 字 · 35 页

青空文庫

歌よみに与ふる書

仰のごとく近来和歌は一向に振い不申候。正直に申し候えば『万葉』以来、実朝以来、一向に振い不申候。実朝という人は三十にも足らでいざこれからというところにてあえなき最期を遂げられまことに残念致し候。あの人をして今十年も活かしておいたならどんなに名歌を沢山残したかも知れ不申候。とにかくに第一流の歌人と存候。あながち人丸、赤人の余唾を舐るでもなく、もとより貫之、定家の糟粕をしゃぶるでもなく自己の本領屹然として山岳と高きを争い日月と光を競うところ実に畏るべく尊むべく覚えず膝を屈するの思い有之候。古来凡庸の人と評し来りしは必ず誤なるべく、北条氏を憚りて韜晦せし人かさらずば大器晩成の人なりしかと覚え候。人の上に立つ人にて文学技芸に達したらん者は人間としては下等の地に居るが通例なれども、実朝は全く例外の人に相違無之候。何ゆえと申すに、実朝の歌はただ器用というのではなく力量あり見識あり威勢あり、時流に染まず世間に媚びざるところ例の物数奇連中や死に歌よみの公卿達ととても同日には論じがたく、人間として立派な見識のある人間ならでは実朝の歌のごとき力ある歌は詠みいでられまじく候。