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まさおかしきくん
正岡子規君
伊藤 左千夫
「日本」日本新聞社、1902(明治35)年9月27日、10月3日、10月4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,058 字 · 9 页
もっともおかしかったのは、つい逝去以前三十日ばかりのこと、長塚からツク芋を贈ってきた、それに大和芋とさも珍しそうに書いてあったので、先生は驚いた様子で長塚もこれほど児供では仕方がない、ツク芋も知らない様ではというので大いに心配した。半枚の原稿も人にかかせる時に、自ら原稿紙三枚ほど書いて、叱ったり教えたりしたそうである。
しからば長塚は真の児供かと云うに決してそうでない。歌も同人間に一頭地を抜いている。処世の道においても、親父なる人の少しく失敗し家産の整理に任じて処理を誤らぬ様である。してみれば先生が長塚を愛したのも唯情一辺でないことも分る。去年の秋であった、長塚と予と折よく会合した時に先生から長塚にやった歌は、よく両者の情合を尽くしている。
喜節見訪竹の里人
下総のたかし来たれりこれの子は蜂屋大柿吾にくれし子
下ふさのたかしはよき子これの子は虫喰栗をあれにくれし子
春ことにたらの木の芽をおくりくる結城のたかし吾は忘れず
多くの場合に人に畏敬せられた先生にして、こんなことの有ったのは世人も少しく意外に感ずるのであろう。
(歌人・作家)
(『日本』明治35・10・3、4/『子規全集・別巻2』