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むさしの

武蔵野

山田 美妙

「読売新聞」1887(明治20)年11~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,798 字 · 26 页

青空文庫

「昨夜、そもいかになされた」

母は十分に口が利けなくなッたので仕方なく手真似で仔細を告げ知らせた。告げ知らせると平太の顔はたちまちに色が変わッた。

「さらばあの帷子の……」

言いかけたがはッと思ッて言葉を止めた。けれどこなたは聞き咎めた。

「和主はそもいかにして忍藻の※(「金+樔のつくり」、第4水準2-91-32)帷子を……」

「※(「金+樔のつくり」、第4水準2-91-32)帷子とは何でおじゃる」

「何でおじゃるとは平太の刀禰、むすめ、忍藻の打扮じゃ。今もその口から仰せられた」

平太も今は包みかね、

「ああ術ない。いたわしいけれど、さらば仔細を申そうぞ。歎きに枝を添うるがいたわしさに包もうとは力めたれど……何を匿そう、姫御前は※(「金+樔のつくり」、第4水準2-91-32)帷子を着けなされたまま、手に薙刀を持ちなされたまま……母御前かならず強く歎きなされな……獣に追われて殺されつろう、脛のあたりを噛み切られて北の山間に斃れておじゃッた」

母は眼を見張ッたままであッた。平太はふたたび言葉を継いだ。

「おれがここへ来る途じゃ、はからず今のを見留めたのは。思えば不思議な縁でおじゃるが、その時には姫御前とはつゆ知らず……いたわしいことにはなッたぞや、わずかの間に三人まで」