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しとはなししたひと
死と話した人
小川 未明
「童話文学」1928(昭和3)年11月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,429 字 · 5 页
生きているという意識は、死の恐れを深く知るものにだけ、それだけありがたいのだ。夜がなかったら、太陽の輝きはわかるまい。この二つは、自然の大きな力なんだ。」と、Aはいいました。
「あの男は、この自然の力について考えただろうか。」
彼は、そんなことも思いました。
だれか、外の戸にさわったようなけはいがします。Aは立ち上がって、出口の戸を開けてみました。すると、そこに、頭から、黒い着物をかぶった脊の高いものが立っているので、びっくりしました。
「おまえは、だれだ?」
「死だ! この家へはいろうかとのぞいていたのだ。俺のことを話したのも、みんな聞いた。」
Aの心臓は、氷の手で、ぐっと握られたように、ぞっとして、ものがいえなく、ふるえていました。
「しかし、おまえたちは、俺の存在を忘れないだけ感心だ。こんどだけは、はいるまい。」
こう、死は、冷ややかにいい放って、大またで歩いて去りました。
空には、こぼれ落ちそうに、星がきらきらとして、低くささやきながら、風が吹いていました。
――一九二八・一〇作――