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しのよこく
死の予告
野村 胡堂
「文芸倶楽部」1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,149 字 · 34 页
「何が可怪しいんだ、勇」
「そうじゃないか。君は新聞作りはうまいが、探偵の真似事はまるっきり駄目だね。いいか、左利きでなくて、左に封筒を持つのは、どんな時だ。君のいい頭で考えて見てくれ」
「封筒を書く時か――封を切る時か――」
「もう一つある」
「切手を貼る時か――」
「そうだそうだ、サア面白くなって来たぞ」
「足の勇」の活動は目覚ましいものでした。
「失礼ですが伯爵、郵便切手は何処に入れてあります」
「卓の左の引出しに、小さい切手入れがあるでしょう。エ、塗物の中を開けて見て下さい。切手が二三十枚入って居る筈です。大川が死んでから此書斎は使いませんが、その前に入れた切手はそのままある筈です」
「ありません、伯爵、切手入れの中は空っぽです、思い違いではありませんか」
「そんな事は無い、私は毎日手紙を出すが、切手は必ず二三十枚は用意してある。現に大川が死んだ日の朝も、切手箱には切手が沢山入って居たのを記憶して居る――」
「そこで、伯爵は切手を舐めて貼るような事はなさらないでしょうな」
「そんな事はしません」
「サア、愈々以て面白くなって来たぞ。――伯爵、この匂いをかいで見て頂き度い。