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しのよこく

死の予告

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,149 字 · 34 页

青空文庫

その場合人間の血管や神経はヒューズになり、心臓は電灯になるのだ。見給え、これだ」

「足の勇」の指したのを見ると、昨夜敬太郎が死んだ風呂の上には、ニッケル鍍金をした水道の蛇口があって、その蛇口の後ろの壁には、ほんの火箸が通るほどの穴が明いて居るのです。

「何んだ、これは」

「この裏は直ぐお勝手だ。電熱器から火箸で、蛇口へ電気を伝えさえすればいい。湯を少し熱くして置けば、頼まなくとも、風呂へ入って居る人は蛇口へ手をかけるよ。百ボルトの電気でも、全身湯につかって居る人の手から伝われば、心臓の弱い人なら決して殺せないことは無い。伯爵はあの通り肥って、心臓の弱いのを気にして居るし、身代りになった坊ちゃんは、それにもまして、ビードロのような脆弱な心臓を持った青年だ。湯へ入って居るところへかけられたら、一たまりもあるもんじゃない。全く心臓が丈夫なら百ボルトの電気では死ねなかったろうよ」

「アッ、本当か、そんな事が出来るのか」

「出来るか出来ないか、兎に角昨日は三月三十日だ。そして、風呂へはあの時伯爵が入る筈だったんだ。女中に呼ばれて来て見ると、坊ちゃんの方がお先へ失敬して入って居るから、伯爵はそのまま二階の書斎へ行き、可哀相に養子は、その身代りにビリビリとやられてしまったのだよ。