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しのよこく
死の予告
野村 胡堂
「文芸倶楽部」1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,149 字 · 34 页
「とうとう来ましたよ、三回目の予告が」
さすがに顔色を変えて居ります。
「エッ、本当ですか」
「これを見て下さい」
伯爵の手から渡されたのは、例のカードに例の悪筆で、
三月二十三日が最後だ。今度は逃さぬぞ。
と引吊ったような不気味な文字が、精一杯の威嚇と呪いにノタ打って居ります。
「もう犠牲者を二人出した。今度はいよいよ私かも知れない」
さすが一時政界の怪物扱をされた伯爵も、こんな心弱い事を言っておびえ切った瞳を四辺の闇に投げます。
「いよいよ警察の力を借りる時ではありませんか」
「いや、それは困る」
伯爵の決心はまだ動かすべくもありません。
「それでは、二人で兎も角明日一日警戒して見ましょう」
「どうか、そう言うことに願い度い、外に方法は無い」
「伯爵――私に少しばかり、考がありますが、容れて下さるでしょうか」
「足の勇」は思い定めた様子で申します。
「どうぞ、何んなりと、決して私は貴方の意見に反かない積りだ」
「それでは、明日一日、私に一切の命令権をお譲り下すって、一挙手、一投足も、悉く私の言葉に従って頂けるでしょうか」
「それ位の事は何んでもない」
「御家族や雇人の方にも、明日一日だけ絶対に私の命令に従うということを誓わせて頂き度いのです」