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ダンスマカブル
死の舞踏
野村 胡堂
「文芸倶楽部」1928(昭和3)年9月増刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,576 字 · 21 页
の袖に拭いて居ります。
諸君はもうお察し下すったでしょう。私には義理の妹、詩人でピアニストで、夕顔の花のように淋しく美しかった幽香子は、昨日の午後、私と愛子が丁度淡路島で楽譜の暗号を解いて居た頃、その夕顔の花が日に当って萎れるように果敢なく目を瞑ってしまったのだそうです。
病気は――?
「三四日前から時候あたりで弱って居てネ。君のところへやる手紙も、私に代筆さした位だが、まさかこんなに急に死ぬとは思わなかった。――どうも一昨日の昼に食べた料理が悪かったらしいんだ。主治医は動物蛋白中毒だというし、特に来てもらって診せた博士は、急性胃腸加答児だというんだ。どっちにしても食物が悪かったんだネ。――未だ二十五や六で、ポックリ死なれては、私も全く途方に暮れた。幸い子供は無いが、あんなに優しかった生前の事や、私が我儘で、随分苦労をさせた事を考えると、泣いても泣いても泣き切れない――」
佐良井は又、背を丸くして、痛々しい程むせび入るのでした。生前あまり仲がよくなかったに付けても、死なれて見ると、急に悲しくなったのでしょう。
こんなのを見せられると、私もさすがに、楽譜の暗号の事などを言い出せるわけはありません。