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ダンスマカブル

死の舞踏

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1928(昭和3)年9月増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,576 字 · 21 页

青空文庫

愛子と二人、玄関からもう貰い泣きをしてしまったような有様でした。

死体を見ると、皮膚に少しばかりでしたが異様な斑点があり、顔も苦悩に引釣って、見る影もなく変って居りましたが、動物蛋白の中毒は、猛烈な症状を呈すると言いますから、専門家が二人で診た以上、素人の我々には何んにも言うことはありません。

そのまま骨にして、仏事一切を了りましたが、その盛大だった事は、実に法外で、仏の為には、まことに結構なことですが、他人の身になったら、あまりの事に少しは苦々しいと思った人もあったでしょう。

併し、何も彼もそれで済んでしまいました。あの淋しい美しい幽香子は、仇敵のように憎んで居た夫の佐良井には、生前はどうしても自由にさせなかった巨万の富を、此世で一番慕って居た義兄の私には、赤鉛筆で印を付けた、不思議な楽譜を五六枚残して死んでしまったのです。

中陰が過ぎても、私と愛子は東京の私の家に止って、諸方の演奏も断り、ピアノの蓋にも鍵をかけないばかりにして、淋しい瞑想的な日を送って居りました。が、丁度幽香子が死んで百日目、佐良井の邸に、例の大袈裟過ぎるほど大袈裟な法事があって、私と愛子はそれに招かれて行った時の事です。