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しまでをかたる

死までを語る

直木 三十五

「話」1933(昭和8)年9月号~1934(昭和9)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 页

青空文庫

自叙伝

一

大草実君が

「直木さん、九月号から一つ、前半生記と云うような物を、書いてくれませんか」

と云ってきた。私は、今年四十二年六ヶ月だから「前半生」と同一年月、後半世も、生き長らえるものなら、私は八十五歳まで死なぬ事になる。これは多分、編輯局で、青年達が

「直木も、そう長くは無いらしいから、今の内に、前半生記みたいなものを、書かしては何うだろう」

と、云って、決まった事にちがいない。そして、大草実は

(長くて一年位しか保つまいから、丁度、これの終る頃くたばる事になると、編輯価値が素敵だ)

と、考えたのであろう。

全く私は、頭と、手足とを除く外、胴のことごとくに、病菌が生活している。肺結核、カリエス、座骨神経痛、痔と――痔だけは、癒ったが、神経痛の為、立居も不自由である。カリエスは、大した事がなく、注射で、癒るらしいが、肺と、神経痛は、頑強で、私は時々、倶楽部の三階の自分の部屋へ、這うて上る事がある。

私が、平素の如く、健康人の如く、歩き、書き、起きしているから、大した事であるまいと、人々は見ているらしいが、五尺五寸の身長で、十一貫百まで、痩せたのだから、相当の状態にちがいない。