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しまでをかたる

死までを語る

直木 三十五

「話」1933(昭和8)年9月号~1934(昭和9)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 页

青空文庫

「淋し」

と、いうのである。

「日曜日に帰ったらええやろ」

「そんならうれしい」

そこで、学校が土曜になると、山の上から三里半五条の町へ走るのである。

丁度、それで汽車に間に合って、大阪着が八時、月曜の朝早く家を出ると、学校の授業に一時間おくれてつく。その一時間は、唱歌の時間にして、時間表を変更し、同僚に頼んでおくのである。

十一円五十銭であるが、初めての月給だし私にとっては大金なんだから、嬉しかった。家は無家賃、芋や、菜は、生徒がくれるから、一ヶ月五円もあれば十分である。残りが小遣になるから、雪ちゃんに、その頃流行っていたリボンを買ったり――リボンと、週一度の汽車の往復、私はその金で、いろいろの物を買おうと、空想していたが、山を下り、山へ上るだけと、リボンとで、丁度月給が一杯であった。

私は、女に無駄金を使って、友人に

「君は、馬鹿だ」

と、今でも叱られるが、この時分から、そうであったらしい。ある日なんぞは、蜜柑を三貫目袋に入れて、背負って、山から汽車へ駈けつけ、へとへとになった事があった。花房の車と走ったり――何うも、少し、おかしな所がある。

その内に、そのおかしな私にも、ははあんと、思うことが出来た。