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しまでをかたる

死までを語る

直木 三十五

「話」1933(昭和8)年9月号~1934(昭和9)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 页

青空文庫

「何」

叫ぶが早いか、大衆作家になる私だ。えいっ、廊下へ飛上った天狗飛切りの術。

「待ってたわいな」

と、奥から出てくる須磨、それを止めようとする姉、うろうろしている竺という爺さんに、女中。

「行こう」

と、須磨へ云った途端、玄竜が

「人の家へ何や」

と、怒鳴ったから、それ、大衆作家の青年時代

「何」

左手で、ネクタイを掴んで、ぐっと、壁へ押しつけた。

玄竜、顔をしかめて

「巡査呼んでこい」

今でも、おかしくて、笑うが、私も逆上していた。

「何んだ」

二三度、力任せに、壁へ押しつけて、右手は、まさかの時の用意。大衆作家だ、その時分から心構えがある。

「何しなはる」

と、叫ぶ姉。

「宗ちゃん、そんな事したら」

と、止めにくる須磨子。

「出ろ」

旦那様だ。

「荷物が――」

「荷物なんか何んだ。こんな家にいたいのか」

私が降りると共に、須磨も降りた。出ようとするとばらばら――雨だ。ちゃんと、ことごとく、大衆文学の段どりに出来ている。竺さんが

「雨や」

と、云って、蝙蝠傘を出してくれた。二人は、行く所がないので、友人の南惣平の所へ泊った。

二十五

親爺というものは、その脛を囓られていても感じないし