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しまでをかたる

死までを語る

直木 三十五

「話」1933(昭和8)年9月号~1934(昭和9)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 页

青空文庫

「困ったなあ」

と、云って、毎日、新聞の就職欄ばかりみていた。

「よしなさいよ」

と、女房に、本気に叱られた事さえあった。

「何うにか成るわ、くよくよしなさんな、こっちが悲しいわ」

と、女房は取上げた新聞をもったまま、快活に云った。その内、一日、保高が

「読売新聞に一つ口があるが」

と、云ってきた。そして

「前田晁氏に逢うて、詳しい話をしてみないか」

と、晁氏の住所を教えてくれた。それで――何処であったか、郊外の晁氏の所へ行くと、二三、簡単な話があって、帰されてしまった。翌日、保高がきて

「君、いけないよ。応接の態度が、記者に適さんのだ、君、格子戸を開けて、首を突込んで、前田さんはと云っただろう」

私は、この時、我慢のならぬ不快さを感じた。その時出てきて、私が首を突込んだのを見たのは、晁氏でなかった。

(晁氏ならとにかく、嬶や女中が何んだ)

と、怒ったのである。

「それがいけないんだね」

「そうかなあ」

この座に、青野季吉が来ていて

「僕を紹介してくれないか」

と云った。青野が、読売へ入ったのは、この時である。そして、とうとう私は、一人だけ取残されてしまった。保高が、気の毒がって