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ししゃをわらう

死者を嗤う

菊池 寛

「中央文學」1918(大正7)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,234 字 · 9 页

青空文庫

啓吉は、懸命に努力して、群衆の中心へ這入る事が出来た。が、まだ自分の前には二三人、人が居て水面の一部をも覗き込む事は出来なかったが、大抵の様子は判った。死人は啓吉の立っている岸の直ぐ下の水中に在るらしい。そして巡査一人と、区役所の人夫が二、三人とで、しきりに引揚に掛っているらしかった。

「這入らなきゃ、駄目じゃないか。思切ってはいっちまえよ。そんな手附じゃ引っかかりこはないよ。」

と、一番形勝の位置に居る、橋の上の群衆は、盛んに人夫等を、指導している。が、その人夫達はなるべく手足を濡らさないように、なるべく汚い思いをしないように、なるべく労力を費やさないように、手際よく引揚を、試みているらしい。

その裡に群衆は、ますます殖えて行った。千人を超した群衆が、この橋を上流下流、四五十間の間ぎっしりと詰めかけている。が、その裡のホンの少数のみが、引揚作業を、目撃し得る位置にあったが、その人達は、自分の看ている事を、後方へ報告する義務を怠りはしない。

「男ですか、女ですか。」

「どうも女らしいですよ、今髪が見えたようですから。」

「こんな水の浅い川で死ねるのでしょうか。