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じゅんし
殉死
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1943(昭和18)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,737 字 · 21 页
さすがに庄兵衛は心をうたれた、思わずはげしい言葉が口をついて出ようとした。むすめは九百石の老職の家にそだてられた、武家だからあまやかした育てかたはしないにしても、まだ十八歳の、男とは鍛えかたのちがうからだである、このような無理が続くわけはない。庄兵衛はそう思った。――黙っているほうがよい、なまじ拒んだりしてはかえって意地をおこさせるもとだ。無情ではあるがそう考えて、かれはそのまま黙って眼をつむった。うしろではときどき居住いを変えるらしく、思出したように身動きのけはいがするほかには、人がいるとも思えぬほどひっそりとしていた。そうして夜半をよほど過ぎてから、庄兵衛はいつものとおり端坐したまま眠った、そしてしらしらと明ける頃に眼がさめてみると、むすめの姿はもうそこにはなかった。――いつか帰ったとみえる。そう思いながらかれは明けがたの雪に埋まった境内のかなたを見やった、ひとりとぼとぼとその道を帰ってゆく小松の姿がみえるように思えた。
四五日して雨が降った、すると初更の頃になってまた小松が来た、そして明けがたまでうしろから傘をさしかけていた。その雨があくる日のひる頃から雪になり、二日のあいだ小やみもなく吹雪き続けた。