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じゅんし
殉死
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1943(昭和18)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,737 字 · 21 页
「武士の道をまもった福尾はお小屋をひとつ賜っただけだし、命だいじと身をまもった者はお側御用の出頭だ、つまりまじめに勤めるのが馬鹿者さ」「だいたい江戸にいた時分からよろしく御前をとりまわしていたのさ、先殿でなければ当お上、なにしろ殿の御意にいりさえすれば家中の意見などはとるに足らぬからな」「これからは勤めぶりも考えてしないととんだことになるぞ」
そこまで聞いた主馬はつかつかとかれらのほうへあゆみ寄った、こちらもそれを待っていたというようすで向き直った。
「お上のお名が出たからひとこと云おう」主馬はしずかな調子で云った、「正月いらい貴公たちのかげ評判は耳にしていた、じかにこの耳で聞いたこともある、江戸そだちは薄情だ武家の道を知らぬ、故殿の御恩を忘れているなどと」
「…………」
「だがもし拙者が江戸そだちの薄情者なら、貴公たちは田舎者の道理知らずだ」
「なに、田舎者だと」
「待て、喧嘩をしに来たのではない、これまでは黙って貴公たちの悪評をきいていた、だから今日は拙者の申すことを貴公たちが聴く番だ、いったい貴公たちは先年の御禁令をどう考えている、殉死の禁は追腹を切りさえしなければよいということか」