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さつじんめいろ
殺人迷路
江戸川 乱歩
05 (連作探偵小説第五回)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,041 字 · 17 页
署長は少々得意でない訳には行かなかった。
「ホウ、すると犯人は、その裏口から出入りしたって訳だね。……無論戸締りはしてあったんでしょうね」
「家主はそう断言している。併し、こんな借家のドアの合鍵を造る位、造作はないですからね。それから正岡君、もっと確かなものがあるんだ。犯人の足跡らしいものがね」
正岡氏は、かくも矢つぎ早に提出される数々の手掛に、寧ろ変挺な驚きを感じないではいられなかった。これがそもそも予告犯人の所謂「完全なる犯罪」なんだろうか。却ってその正反対のものではないのか。
「足跡って、どこにです」
「その指紋のあるドアの内側にも外側でも。マア来てごらんなさい。それを見ると、犯人の行動が手にとるように分るんだから」
署長は先に立って、その裏口のドアへと、階段を降りて行った。正岡警部、雑誌記者津村、小説家星田の順でゾロゾロとそのあとに続く。
だが、この事件については最も熱心であるべき小説家星田が、なぜ一同の一番あとになって、しかも、まるで気乗りのしない調子で、ノロノロと歩いて行ったか。実に不思議と云わねばならなかった。
彼の顔は異様に蒼褪ていた。