轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ははのにおい
母の匂い
佐藤 垢石
「釣りの本」改造社、1938(昭和13)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 717 字 · 2 页
母はいつも、釣りから戻ってきた父をやさしくいたわった。子供心に、私はそれが何より嬉しかった。
やはり、五月はじめのある朝、父と二人で、村の河原の雷電神社下の釣り場へ若鮎釣りを志して行った。父と私が釣り場へ行く時には、いつも養蚕に使う桑籠用の大笊を携えるのであった。あまり数多くの若鮎が釣れるので、小さな魚籠ではすぐ一杯になってしまい、物の役にたたなかったのである。
釣り場へ着くと大笊を、二人の間の浅い瀬脇へ浸けてから、鈎をおろすのを慣わしとした。道糸を流して流れの七分三分のところまで行くと、目印につけた水鳥の白羽がツイと揺れる。若鮎が、毛鈎をくわえたのだ。軽く鈎合わせをする。掛かった鮎を、そのまま大笊の上へ持ってきて振り落とす。
こうして、二時間もすると、大笊のなかは若鮎の背の色で、真っ黒になるのを常としたのであった。
お腹が、すいてきた。
『お母さんは、もうきそうなものだね』
と、私は無言のまま一心に道糸を見つめる父に話しかけた。腹がすいてくるのを覚えるといつも間もなく母がお弁当を持ってくる時刻になるからである。やがて、崖の上から、
『どうだい、釣れたかい?』