轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ぼしじょじょう

母子叙情

岡本 かの子

「文学界」1937(昭和12)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页

青空文庫

と答えた自分の言葉が酷く気になり出した。それは、こましゃくれていて、悪く気丈なところがある言葉だった。どうか老紳士も之だけは覚えていて呉れないようと願っていると、そのあとから、ふいと老紳士がいった、「一人で、よく置いて来られましたな」という言葉がまた浮び出て来た。すると、むす子は一人で遠い外国に、自分はこの東京に帰っている。その間の距離が、現実に、まざまざと意識されて来た。もういけない。しんしんと淋しい気持が、かの女の心に沁み拡って来るのだった。

かの女が、いよいよ巴里へむす子を一人置いて主人逸作と帰国するとき、必死の気持が、かの女に一つの計画をたてさせた。かの女は、むす子と相談して、むす子が親と訣れてから住む部屋の内部の装置を決めにかかった。むす子が住むべき新しいアパートは、巴里の新興の盛り場、モンパルナスから歩いて十五分ほどの、閑静なところに在った。

そこは旧い貧民街を蚕食して、モダンな住宅が処々に建ちかかっているという土地柄だった。

かの女はむす子の棲むアパートの近所を見て歩いた。むす子が、起きてから珈琲を沸すのが面倒な朝や、夜更けて帰りしなに立ち寄るかも知れない小さい箱のようなレストランや、時には自炊もするであろう時の八百屋、パン屋、雑貨食料品店などをむす子に案内して貰って、一々立ち寄ってみた。