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ははおや

母親

豊島 与志雄

「読売評論」1951(昭和26)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,057 字 · 11 页

青空文庫

三つの男女、五つの男、七つの女、それらの幼い者たちが、和洋とりどりの衣裳を着飾っているばかりでなく、附き添ってる親たちまで、今日を晴れと装いをこらしている。その往き来で、神社の中はぱっと花が咲いたように見え、なお、飴や玩具類の屋台店が立ち並び、風もないのに風車はくるくる廻り、風船玉はふわりと宙に浮び、あたりに香りが漂っている。信子は買物袋をさげ、喜久子の手を引き、人込みの鋪石道をさけて、屋台店の後ろを通り、唐門をくぐって行く。

そこで、はたと当惑する。

拝殿の前には、太い綱が二本張られていて、その両方に狭い通路が設けられており、左手の通路内の卓子に、一人の神官が帳簿を前にして控えている。参詣の子供たちの氏名を書き留めるのであろう。拝殿の前面には、美装の人々が立ち並び、衣冠束帯の神官から清め祓いを受け、白紙に包んだ御供物を貰い、そして右手の通路から退出して来るのである。

それらのことを、信子と喜久子は黙って眺める。綱のこちらには、他にも数人の見物人がいる。みなふだん着の人たちばかりだ。

信子は娘に言う。

「ここから、拝んでいきましょう。そして、着換えをして、また参りましょうね。