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どくガスはつめいかん

毒瓦斯発明官

海野 十三

――金博士シリーズ・5――

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 9,511 字 · 20 页

青空文庫

そういえば「新青年」誌上にのっている金博士の顔は、蜘蛛の精じみた風貌をもっているよ。

閑話休題、金博士は、ようやく注意力の二割がたを、蜘蛛の声に向けて割いた。

「おう、そういうお前は醤買石じゃな。お前はまだ生きていたんか」

醤買石といえば、あの有名なる抗日遷都将軍の名である。すると醤買石も、ついに人間の皮を被っては遷都する先がなくなって、遂に大蜘蛛に化けたのであるか。それとも、彼はオーストラリヤで戦車にのし烏賊られて絶命し、魂魄なおもこの地球に停って大蜘蛛と化したのであるか。

「あれ、金博士。醤はそう簡単に死にませんよ。しかしとにかく、博士にお目にかかりたいばかりに、部下もつれずに単身、きびしい監視網をくぐって、ようやくここまで参りました。そしてとうとう博士に行き会いまして、こんな嬉しいことはございません。ふふふふ」

ふふふふは、醤の笑い声ではない。感激の泣き声である。泣き声がその極致に達すれば笑い声に似たる――ああもうその解説はよろしいか。なるほど前にも鳥渡書きましたなあ。

「泣くなよ、醤。お前は小便小僧時代から泣きべそじゃったな。東に楠の泣き男あり、西に醤買石ありで、ともに泣きの一手で名をあげたものじゃ。