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ひかくかがくろん

比較科学論

中谷 宇吉郎

「寺田寅彦――比較科学論」新潮社、1959(昭和34)年4月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,520 字 · 19 页

青空文庫

水蒸気で飽和した空気を、急激に膨脹させると、温度が下って、過飽和の状態になる。このときに、空気中に芯になるものがあると、それに水蒸気が凝縮して、白い霧ができる。ウィルソンはX線やラジウムの放射線で照射して正負のイオンをつくりながら、急激膨脹を起させると、白い霧ができるという実験をしていた。

そのうちに、尖端放電によってできるイオンの分布を知る必要がでてきた。それで函内の空気を乱さないで急激膨脹をさせるために、丈の低い円筒型の器をつくり、底全体をピストンにして、急激に下げる装置をつくった。この装置で、尖端放電の研究をするつもりだったところが、膨脹させてみたら、白い線が見えた。ラジウムを使っていたので、エマナチオンが空気中にまじっていて、アルファ線が出ていたのである。放射線の粒子が走る途中、空気の分子と衝突して、イオンをつくる。そのイオンを中心にして水滴ができたので、この白い線は、アルファ線が走ったあと、すなわち飛跡を示すものである。すなわちこの方法を使うと、放射線粒子一つ一つの運動が、眼に見えることになる。それはたいへんな大発見だということになって、もう雨どころの騒ぎでなくなった。