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けのゆびわ

毛の指環

宮本 百合子

「若草」1927(昭和2)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,492 字 · 9 页

青空文庫

小学校を最優等でお千代ちゃんは卒業し、日比谷公園へ行って市長の褒美を貰った。その時、お千代ちゃんはやっぱり地味な紡績の元禄を着て海老茶袴をつけて出た。新聞が、それを質素でよいと褒めた。由子は、そうは思わなかった。いい着物をお千代ちゃんに着せたかった。あって着ないのではない。お千代ちゃんの家は貧しいのを、由子は知っていた。

お千代ちゃんが、由子の家から三町もない処へ越して来た。家じゅう引越して来たのではなく、お千代ちゃんだけ、お祖母さんのところへ来たのであった。いきなり木戸で、入ると花が一杯縁側まで咲きこぼれていた。縁側から油障子のはまった水口が見え、その障子が開いていると、裏の生垣、その彼方の往来、そのまた先の×伯爵の邸の樫の幹まで三四本は見られる。

*

お祖母さんの家はそのような家なのであった。二階があった。そこに叔父さんがいた。その人は絵描きであった。

お千代ちゃんは、由子の入った女学校の試験を受ける積りであった。由子はどうかして入って欲しいと思った。女学校をずっと二人で通えたら、それは素晴らしいことだ。由子は勿論お千代ちゃんは容易く試験を通るとその学力を信頼していた。