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きむずかしやのけんぶつ

気むずかしやの見物

宮本 百合子

――女形――蛇つかいのお絹・小野小町――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,739 字 · 6 页

青空文庫

)

宗之助の小町に、些も小野小町らしい大らかさも、才気もなく、始めから終りまで、妙にせっぱ詰った一筋声で我身を呪ったり、深草少将を憤ったりしたのは、頭が無さすぎた。

科白も始めの部分と終りの方とでは言葉使いが違っている。勿論台本がああなっていたのだろうが、前半の写実風を一貫させるなら、深草少将の身代りに、口惜しさのあまり「そなたと契ろうよ」とかなり正面から哀切にゆき、身代りがあわてふためき覆面をかなぐりすて、

「やつがれは六十路を越したる爺にて候」

と、平伏し逃げかけるところで、復讐さえしそこなった小町の絶望困惑身を置くところも知らない爺とに、悲哀の籠った滑稽を味わせるもよし。又は、後半の狂言風な可笑しみで纏め、始めの自責する辺などはごくさらりと、折角、一夜を許し、今宵の月に語り明かそうと思えば、いかなこと、この小町ほどの女もたばかられたか、とあっさり砕けても、或る面白味があっただろう。

行き届いて几帳が立ててあるのだから、深草少将が庭先に入って来た時だけでも、そのかげに半ば隠れ立って、自らな女らしい心のときめきを示してもよかったろう。後で身代りと露見した時の小町の驚き、憤りを、一層愛らしい人間的なものにする効果もある。