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みずのおんな

水の女

折口 信夫

「民族 第二巻第六号」1927(昭和2年)年9月、「民族 第三巻第二号」1928(昭和3年)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,525 字 · 38 页

青空文庫

一 古代詞章の上の用語例の問題

一 古代詞章の上の用語例の問題

口頭伝承の古代詞章の上の、語句や、表現の癖が、特殊な――ある詞章限りの――ものほど、早く固定するはずである。だから、文字記録以前にすでにすでに、時代時代の言語情調や、合理観がはいってくることを考えないで、古代の文章および、それから事実を導こうなどとする人の多いのは、――そうした人ばかりなのは――根本から、まちごうた態度である。

神聖観に護られて、固定のままあるいは拗曲したままに、伝った語句もある。だがたいていは、呪詞諷唱者・叙事詩伝誦者らの常識が、そうした語句の周囲や文法を変化させて辻褄を合せている。口頭詞章を改作したり、模倣したような文章・歌謡は、ことに時代と個性との理会程度に、古代の表現法を妥協させてくる。記・紀・祝詞などの記録せられる以前に、容易に原形に戻すことのできぬまでの変化があった。古詞および、古詞応用の新詞章の上に、十分こうしたことが行われた後に、やっと、記録に適当な――あるものは、まだ許されぬ――旧信仰退転の時が来た。奈良朝の記録は、そうした原形・原義と、ある距離を持った表現なることを、忘れてはならぬ。