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みずのおんな

水の女

折口 信夫

「民族 第二巻第六号」1927(昭和2年)年9月、「民族 第三巻第二号」1928(昭和3年)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,525 字 · 38 页

青空文庫

しかも尊体の深い秘密に触れる役目である。みづのをひもを解き、また結ぶ神事があったのである。

七処女の真名井の天女・八処女の系統の東遊天人も、飛行の力は、天の羽衣に繋っていた。だが私は、神女の身に、羽衣を被るとするのは、伝承の推移だと思う。神女の手で、天の羽衣を着せ、脱がせられる神があった。その神の威力を蒙って、神女自身も神と見なされる。そうして神・神女を同格に観じて、神をやや忘れるようになる。そうなると、神女の、神に奉仕した為事も、神女自身の行為になる。天の羽衣のごときは、神の身についたものである。神自身と見なし奉った宮廷の主の、常も用いられるはずの湯具を、古例に則る大嘗祭の時に限って、天の羽衣と申し上げる。後世は「衣」という名に拘って、上体をも掩うものとなったらしいが、古くはもっと小さきものではなかったか。ともかく禊ぎ・湯沐みの時、湯や水の中で解きさける物忌みの布と思われる。誰一人解き方知らぬ神秘の結び方で、その布を結び固め、神となる御躬の霊結びを奉仕する巫女があった。この聖職、漸く本義を忘れられて、大嘗の時のほかは、低い女官の平凡な務めになっていった。