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みずのおんな
水の女
折口 信夫
「民族 第二巻第六号」1927(昭和2年)年9月、「民族 第三巻第二号」1928(昭和3年)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,525 字 · 38 页
一一 天の羽衣
みつはまた地名にもなった。そうした常世波のみち来る海浜として、禊ぎの行われたところである。御津とするのは後の理会で「つ」そのものからして「み」を敬語と逆推してとり放したのであった。常世波を広く考えて、遠くよりより来る船の、その波に送られて来着く場処としてのみつを考え、さらに「つ」とも言うようになったのである。だから、国造の禊ぎする出雲の「三津」、八十島祓えや御禊の行われた難波の「御津」などがあるのだ。津と言うに適した地形であっても、かならずしもどこもかしこも、津とは称えないわけなのである。後にはみつの第一音ばかりで、水を表して熟語を作るようになった。
一一 天の羽衣
みづのをひもは、禊ぎの聖水の中の行事を記念している語である。瑞という称え言ではなかった。このひもは「あわ緒」など言うに近い結び方をしたものではないか。
天の羽衣や、みづのをひもは、湯・河に入るためにつけ易えるものではなかった。湯水の中でも、纏うたままはいる風が固定して、湯に入る時につけ易えることになった。近代民間の湯具も、これである。そこに水の女が現れて、おのれのみ知る結び目をときほぐして、長い物忌みから解放するのである。