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みずのおんな

水の女

折口 信夫

「民族 第二巻第六号」1927(昭和2年)年9月、「民族 第三巻第二号」1928(昭和3年)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,525 字 · 38 页

青空文庫

四 筑紫の水沼氏

と訂すのは考えものである。後世の考えから直されねばならぬほど、風土記の「水沼」は、不思議な感じを持っているのだ。人間に似たもののように伝えられていたのだ。この風土記の上られた天平五年には、その信仰伝承が衰微していたのであろう。だから儀式の現状を説く古の口述が、あるいは禊ぎのための水たまりを聯想するまでになっていたのかも知れぬ。もちろんみぬまなる者の現れる事実などは、伝説化してしもうていたであろう。三津郷の名の由来でも、「三津」にみつまの「みつ」を含み、あるいは三沢(後藤さん説)にみぬ(沢をぬ・ぬまと訓じたと見て)の義があったものと見る方がよいかも知れない。でないと、あぢすき神を学んでする国造の禊ぎに、みぬまの出現する本縁の説かれていないことになる。「つ」と「ぬ」との地名関係も「つ」から「さは」に変化するのよりは自然である。

四 筑紫の水沼氏

筑後三瀦郡は、古い水沼氏の根拠地であった。この名を称えた氏は、幾流もあったようである。宗像三女神を祀った家は、その君姓の者と伝えているが、後々は混乱しているであろう。宗像神に事えるがゆえに、水沼氏を称したのもあるようである。