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みずとりてい

水鳥亭

坂口 安吾

「別冊文藝春秋 第一五号」1950(昭和25)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,705 字 · 62 页

青空文庫

「ウソですよ。へりくだると見せて威張るのよ。悪質の成金趣味よ。ねえ、克子」

「そうよ。無学文盲の悪趣味よ。裏長屋の貴族趣味ね」

「バカな。お前らのハラワタが汚いから、汚い見方しか出来ないのだ。だいいち、野口君は、伊東の別荘などと言いはせん。いつも、ただ、伊東の、という。つとめて成金らしい口吻をさけているのが分らんか」

「つまんない。裏長屋のザアマス趣味をひッくりかえしただけよ」

女子大生の克子は投げすてるように言う。

「伊東の別荘と言いたいのを、伊東で切らなきゃならないからイヤらしいのよ。使用人に届けさしゃいいものを、今、帰り路ですなんて、恩にもきせたいし、伊東の別荘も言いたいからよ。わざと、へりくだることないじゃないの。いつもタマゴは三ツなのね。不自然ね。ムリして数を合せてさ。一から十までムリしてるのよ」

「生意気な。なにを言うか。このイワシをみろ。七匹じゃないか。ムリして数を合せてはおらん。お前らのゲスのカングリ、汚らしいぞ」

克子は皿の上の焼いたイワシに白い眼をむけて、

「七匹なんて、変ね」

と、薄笑いをうかべる。イワシを突きこわして、ゆっくり食べながら、