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みずとりてい

水鳥亭

坂口 安吾

「別冊文藝春秋 第一五号」1950(昭和25)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,705 字 · 62 页

青空文庫

餞別にそっくりタダで差上げたいのは山々ですが、私も焼けだされだから、そう気前よく出来ないのが残念です」

「近代戦の上陸地点の激戦の跡というものは、満目荒涼、山の形も川の流れも変るでしょう。草も木も、小鳥も虫も、何もありません。どこに伊東の町があったか、見当もつかないでしょう。あなたの地所が川か沼にならなければ幸せというものですな。温泉町として復活するにも二十年はかかるでしょう。そのころは、私は死んでいるでしょうな」

亮作は、また、残酷に笑った。

「すると、日本は亡国ですな」

野口はやりかえした。

「すべてを失った後に於て、日本は勝ちます。太古にかえり、太虚に至って、新世界の黎明が現れます。日本は太虚であり、太陽であり、新世界の盟主です。記紀に予言されたところであり、歴史的必然です」

「そうあって欲しいものですよ。ところで、梅村さん。穴の中に隠れてくらすにしても、人間は何か食わずには生きられませんよ。穴の中の生活に配給はありませんぜ。自分の畑がなくて、あなた、どうなさる。この畑には、鶏小屋も鶏も附属していますぜ。日本の現状に於ては、まさに王侯じゃないですか。