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みずとりてい

水鳥亭

坂口 安吾

「別冊文藝春秋 第一五号」1950(昭和25)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,705 字 · 62 页

青空文庫

「私はあなたとは論争しません。あなたが弁護士でしたら、殺人犯人がどんなに喜ぶか知れませんよ。泥棒や詐欺は正業という結論になったでしょうよ。債権者は罪人になります」

「私をからかうために、この売買の話をもちかけたのですね。それでしたら、あなたは本当に罪人ですとも」

「あなたに善人とよばれるよりは、罪人とよばれることを喜びますよ」

「あなたは私をぬか喜びさせ、期待にふるえる思いをさせて、ドン底へ突き落したのです。希望をもたなかったうちは、私は鶏小屋の生活に安住することができたでしょう。こんなふうに、いっぺん空へ抱き上げて、突き落されては、私はもう平静な心境を失いました。私は絶望させられたのです。手足を折られた上に、さア働いて生きて行け、と突き放されたようなものです。私をどうして下さるのですか」

「私は何もしませんよ。この土地と建物を売って、軽井沢へひきあげるだけです」

「じゃア、二千五百円で、土地の半分と、建物の半分と、源泉の半分を売って下さい」

「あと半分の買い手を探していらしたらね」

亮作は顔をしかめて、手放しで、ポロポロとなきだした。

「私は悲しい思いを忘れていました。