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みずとりてい
水鳥亭
「別冊文藝春秋 第一五号」1950(昭和25)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,705 字 · 62 页
しかし野良では男の何人分も働いて、二町歩の田畑を楽々たがやした。鍋をかきまわすことよりも、肥ダメをかきまわすことを好んだ。
金時のもとへ忍んでくる物好きな男もなかったので、田畑づきの別荘番としては、これ以上の適任者は見当らない。
亮作は耕作の知識がなかったので、つづいて金時に居てもらうことにしたが、二町歩の耕地の実りは大きいから、敵が上陸してくるまでは、金時の働きで左ウチワの生活ができるのである。
たった一日でフシギな変動であった。鶏小屋住いの無一物の亮作は、今はしかるべき富豪になっていた。それは敵の上陸をめぐって計算された取引であったが、敵が上陸してくるまでは彼が別荘の主人であるのはマギレもない事実であった。
亮作は満足であった。そして自分の物となった座敷へあがってボンヤリしていた。戦争中の人間は自由の時間にボンヤリするのが例であったが、亮作はもっとボンヤリした。
金時が部屋へきて、彼のうしろに立った。
「フトン買ってくれ」
「フトン?」
「カヤもいる」
「お前、もたないのか」
「お前も、もたないだろう」
亮作の胸にほろ苦いものがこみあげる。やっぱり無一物なのだ。