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えがわらんこ
江川蘭子
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1930(昭和5)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,151 字 · 23 页
すると彼女は、二三度空中からもんどり打って、網の上に落ち落ちしたあとではあったが、一日で、数丈の空のブランコからブランコへと飛び移る軽業を習い覚えてしまった。
次の土地の興行から、ラン子は軽業の太夫として客にまみえた。そして瞬く間に、座中第一の人気者になってしまった。彼女は空中に於て、どんな先輩よりも大胆不敵であった。しまいには、下の救命網をとりのけてくれとさえ云い出した程だ。
江川氏夫妻は、云うまでもなく、血眼になって娘の行方を探していたが、どういう訳かいつまでも知れずにいた。
ラン子は旅から旅への興行の間に、十六歳の春を迎えた。早熟な彼女は、身体こそ少年の様にしなやかであったが、睫毛の長い二かわの目には、已に大人の媚と潤いをたたえていた。
彼女にとって、空中の離れ業などは、最早何の危険をも、随って魅力をも感じない日常茶飯事になってしまっていた。
ある日、ラン子の朋輩の娘が、高い竹竿の上から墜落即死した事件があった。
十一歳のその娘は、投げつけた餅の様に、地面に平べったくなって動かなかった。真青な顔にベットリ汗をにじませた座員達が、そのまわりを取巻いた。