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えどげいじゅつろん

江戸芸術論

永井 荷風

在线阅读永井 荷風《江戸芸術論(えどげいじゅつろん)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,130 字 · 167 页

青空文庫

浮絵は後年北斎広重によりて完成せられたる浮世絵風景画の前提と見るべきものなり。天明の初め四方赤良、唐衣橘洲、朱楽菅江らの才人江戸に狂歌を復興せしむ。狂歌の流行はここに摺物と称する佳麗なる板物並に狂歌集絵本類の板刻を盛んならしむるに及びて、浮世絵の山水画はために長足の進歩をなし得たり。江戸名所を描ける絵本を尋ぬるに、遠くは菱川師宣の『狂歌旅枕』、近くは宝暦初年西村重長の『江戸土産』及び明和に入りて鈴木春信が『続江戸土産』の梓行あるに過ぎざりしが、天明年代に至るや北尾政美が『江戸名所鑑』(三巻)鳥居清長の『物見ヶ岡』(二巻)喜多川歌麿の『江戸爵』(三巻)北尾重政の『吾妻袂』(三巻)の類続々として出板せられたり。しかしてこれらの絵本はいづれも当時著名の狂歌師の吟咏を画賛となせり。狂歌集『狂月望』及『銀世界』に挿みたる歌麿の山水は今日欧洲人の称賛して措かざる逸品なり。此の如く江戸名所を課題とせる狂歌の流行は江戸名所の風景に対する都人士の愛好心を増進せしむると共に、自らまた画工の風景に対する観察を鋭敏ならしめその布局を純化せしむるに多大の効果ありしや明かなり。