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けっとうじょう
決闘場
岡本 かの子
「ペン」1936(昭和11)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,298 字 · 23 页
アイリスは昨夜の一時的亢奮の冒険を苦々しく思って居た。彼女の性に対する好奇心が、あんなにもたわいなくワルトンに乗ぜられた事が、じっとして居られない程口惜しかった。感情の反動でワルトンと彼女は殆んど口を利かなかった。彼女の内に籠っての無表情と無口はワルトンを狼狽させ、殆んど彼女に腕力を加え度いほど憤らせた。でも、その後、彼女は気持よく晴れた空気の中で、すがすがしい緑樹の蔭で、時には打ち解けてワルトンを懐かしそうに見えた。夢遊病者のように幽幻に彼女が振舞うのにワルトンは暫らく見とれた。が、それ等の彼女の美点は、ワルトンに少しも関係の無い気がし出した。全く彼女の彼に対する反応はほんの僅かであった。ワルトンは寂しくて馬鹿らしくて仕様がないのであった。でも彼は楽天主義者であったから、期待は細々と持ち続けた。半月以上経って、アイリスが自分と同程度にジョーンを遇するのを知って、ワルトンは意気込んだ。彼は元気を出した。余計に自分を意識して、自分の力を信じた。彼女を自分の庇護の下に連れて来ようと思い暮した。彼はジョーンに今直ぐにも鼻をあかしたかった。屹度それが出来るとワルトンは信じて居た。