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きせんのなかのちちとこ
汽船の中の父と子
小川 未明
「赤い鳥」1924(大正13)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,175 字 · 9 页
父親は、赤いさんごを採った、南の小さな島を思い出しました。また、青い石を掘った、北の寒い島の景色を思い出しました。また、暴風の日のことなどを思い出しました。かぎりない、海の上の生活を、つぎからつぎへと、記憶に呼び起こしたのであります。
「このオルゴールは、海の唄とでもいうのかな?」と、父親は感心して、たずねました。
おじいさんは、笑って、
「いや、鳥の唄だと、いったものがあります。」と答えたのでした。
「鳥の唄? なんという鳥であろう。」
父親は、どうしても、その鳥を思い出すことができませんでした。
「なんにしても、まあ、いい。どうか、このオルゴールを譲ってもらいたいものだ。」といって、おじいさんに、頼みました。
「私は、子供の時分から、故郷を出て流浪しています。このごろは、このオルゴールをいい値で買う人を見つけて、もし売れたら、故郷へ帰りたいと思っています。」といいました。
子供は、おじいさんのいうことを聞いて、同情しました。自分が、つねに、美しい草花や、ちょうや、野原に憧れている心持ちを、よく知っていたからであります。
父親は、いくらかの金を出して、そのオルゴールを買いました。